1025 / 2012
第1025話
ちょっと唇を尖らせていると、ジークに少し呆れられた。
「お前さん、性格は悪くないのに結構ヤキモチ焼きなんだな。俺と話してるとしょっちゅうそういう顔になるぞ」
「えっ? そういう顔とは……」
「そりゃあ、こう……唇をへの字に曲げてムッとしたような顔さ。俺がフレインと仲良くしてるのが気に食わないんだろ」
「あ、え……いや、そこまででは……。ただ、兄はあの通り浮気性なので、ジーク様みたいな元彼がいるとすぐ浮気に走るというか……」
ごまかしてもしょうがないと思い、アクセルはあえて正直に言った。
アクセルがヴァルハラに来る前のことは目を瞑るしかないが、ヴァルハラに来てからもちょいちょいジークと浮気しているから、こちらとしては気が気ではないのだ。
するとジークは顎に片手を当てて、言った。
「ヤツは浮気性というより、寂しがり屋なだけだと思うぞ。寂しくなって一時的な身体の繋がりは求めるが、頭の中はお前さんのことでいっぱいだ。そこまで心配する必要ないと思うがな」
「そう……ですよね。俺もわかっちゃいるんですけど、やっぱり少し複雑で」
「ま、大好きなお兄ちゃんのことだから、なかなか割り切れないのもわかるけどな。でも俺は、あんなメンヘラ男の面倒を見るのはもう御免だ。あれに付き合えるのはお前さんしかいないさ」
「……メンヘラ男って」
思わず噴き出しそうになった。さすがにジークは、元彼だけあって言うことが辛辣である。
「話が終わったならさっさと帰ってやれよ。今頃腹を空かせて暴れてるかもしれないしな」
「それは困りますね。兄が本気で暴れたら家が壊れそうです」
それでは失礼します……といって、アクセルはいそいそとその場を立ち去った。
帰り際、コニーがランゴバルトの甲冑を丁寧に脱がせ、汗ばんだ身体を拭いているのを見て驚愕してしまった。身の回りの世話って、そういうことまでやるのか。
――あの二人の関係、やっぱり少し謎だな……。
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