1026 / 2012
第1026話※(閲覧注意)
今度時間があったらコニーにじっくり話を聞いてみよう。そう思い、アクセルは急いで市場で食料だけ買い込んで、家に戻った。
そろそろ起きてくれると助かるんだが……などと考えつつ、庭を通って玄関に向かおうとしたのだが、
「え……っ?」
途中のピピの小屋を見て、ぎょっと目を剥いた。何故か小屋は半壊状態で、周囲にピピのもふもふした毛玉が飛び散っている。
嫌な予感がして中を覗き込んだら、ところどころに半乾きの血痕が残っていた。当然、ピピの姿はない。
「な……なんだ、これ……!?」
何者かがピピを襲ったってことか? 誰かがうちを襲撃しに来たってことか? ピピはどうなったんだ? 兄は無事なのか?
「兄上!」
アクセルは慌ててベランダから家の中に入った。
案の定、家の中も荒らされていて、特に食事をするテーブル周りはめちゃくちゃだった。兄のために置いてあった朝食は食い散らかされ、皿やグラスが散乱している。
理解が追い付かなくて呆然としかけていると、キッチンから物音が聞こえてきた。
ハッとして身構えつつ、足音を忍ばせてそちらに近付く。誰がいるのかはわからないが、何かを食っているような、バリムシャという音が続いていた。
襲撃してきたヤツが、キッチンで何か食べているのか? そんなことあるのか?
何が目的か知らないが、留守の間にうちをこんな風にしたのは許せない。
アクセルは思い切ってキッチンに飛び込んだ。
対面したらすぐさま小太刀を抜こうと思ったのだが、そこにいた人物を見たら身体が固まってしまった。
「ありャ、アクセルだ」
しゃがみ込んだ状態のまま、首だけ捻ってこちらを見てくる兄。その口元は赤い血糊でべっとり汚れており、左腕も肩からスッパリ切られて血がボタボタ滴っている。
誰かに斬られたのかと思ったが、兄が食べかけていた食材を見たら、一瞬にして血の気が引いた。
――……嘘だろ……?
兄が夢中になって食べていたのは、自分で斬り落とした自分の腕だったのだ。
「おかエり、待っテたよ」
当たり前のように穏やかな笑みを浮かべてくる兄を、アクセルは生まれて初めて恐ろしく思った。
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