1027 / 2012
第1027話※(閲覧注意)
「あ……にうえ、それは……」
「うン? あ、コれ? いやァ、おなかがすきすぎテどうしてもがまんできなかったカら、おまえがかエってくるまでのしノぎとして、じぶんのうでヲたべてたんダ」
「…………」
「デも、やっぱりじぶンはおいしくなイね。きんニくばかりでかたいンだ。どうせたべるなラ、しカにくのすてーキがいいな」
「…………」
「ネ、おにくかってきてくれタ? おなかすいタから、はやくやイてほしいな」
自分の腕を食べながらも、当たり前のように日常会話を繰り返してくる兄。口の周りが血で汚れ、自分の左腕からも血が滴っているのにまるで気にしていない。痛みすら感じていないかのように、にこにこと話しかけてくる。それがまたぞっとした。
アクセルは視線を落とし、唇を震わせながら聞いた。
「……兄上、ピピはどうした」
「ぴぴ? ぴぴってなンだっけ?」
「庭にいたうさぎのことだ。大きな神獣がいただろう」
「あァ、あのうさぎカ。まるまるしテておいしそうだったかラ、さばいてたべようトおもったらにげられちゃッた。さすがにうさぎハ、にげあしがはやイね」
「……そうか」
やはりあれは兄の仕業だったのか。小屋がめちゃくちゃに荒らされていたのも、兄がピピを襲ったからか。
無事逃げられたならよかったけれど、飼い主に襲われた以上、もうピピは二度とここへは戻って来ないだろう。
いや、それ以前に――いくら空腹が我慢できなかったからって、飼っているうさぎを殺して食おうだなんて何を考えているのか。そんなことが許されると思っているのか。一体どういう神経をしているのだろう。怒りを通り越して頭が真っ白になりそうだ。
――いや、これも獣化の症状なのか……。
これ以上見ていられない。アクセルは兄の右腕を掴むと、強引にキッチンから連れ出した。そして早口に言った。
「兄上、今すぐ治療しにいこう」
「ちりョう? なんノ?」
「獣化のだよ。今のあなたは正気じゃない。このまま放っておいたら破魂まっしぐらだ。俺はそんなのは御免だ」
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