1028 / 2012

第1028話※(閲覧注意)

「えェ? わたしハなにもおかシくないヨ? ふつうノことをしてるだケだよ?」 「…………」 「おまえだっテ、おなかがすいたラしょくじをするでしょう? だからわたシもしょくじをしたンだ。なにモおかしくないじゃなイ。わたシはだいじょウぶだから、しんぱいいらないヨ」 「…………」 「ねェ、はなシてよ。ちりょうなんかいヤだよ。ちりょうッて、しらないとこロにとじこめられるンでしょ? すきナものもたべられなイし、おまえにモあえないじゃないカ。そんなノいやだよ……」 「…………」 「ねぇ、きいてル? もしかシて、なにかおコってるの? わるイことしたならあやまルよ。ごめンね? むシしないで……」 「……兄上……」  聞けば聞くほど、胸がズキズキ痛んできた。自分がやったことを理解できず、子供のように縋りついてくる兄が哀れでならなかった。本人に悪気がないところが余計に辛かった。  気づいたら兄の腕を掴みながら、ぼろぼろ泣いていた。 「……アクセル? どうしタの? なんでないてルの? どこかいたイの? なカないでよ……」 「……兄上、お願いだ。今回だけでいい、俺の言うことを聞いてくれ。これ以上放っておいたら、あなたはどんどんおかしくなる……」 「わたシはおかしくなイってバ」 「あなたは自分がおかしいこともわかっていない……。普通は腹が減ったからって、ピピを襲って食おうとしないんだよ。自分の腕を切って食べたりしないんだよ」 「…………」 「今ならまだ間に合う……元の兄上に戻れる……。ここは俺を助けると思って、どうか治療を受けてきてくれ……。今のあなたは……正直、見るに堪えないんだ……」  ぐすん、と鼻をすすり上げる。濃厚な血の臭いが妙にリアルだった。  こんな出来事、夢であって欲しい。目覚めたら隣にいつもの兄がいて、穏やかに笑い合いながら食事をしたり出掛けたりしたかった。  昨日まではそんな日常が続くと信じていたのに、今日になって何故いきなりこんなことになってしまったのだろう……。

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