1031 / 2012
第1031話
アクセルは急いで兄に駆け寄り、その身体をしっかり抱き締めた。
「兄上、ごめん……俺が悪かった。俺は今も昔も、ずっとあなたのことが大好きだ」
「うわぁぁぁン!」
「とりあえず一度泉に行こう? 千切れた腕だけでも治さないと。それからどうするか、一緒に考えよう、な?」
「えェぇぇん!」
「兄上、俺のことわかるか? あなたの弟・アクセルだよ。俺はちゃんとここにいる。どんなことがあっても、俺はあなたの味方だ。何も心配しなくていいから、そんなに泣かないでくれ」
「う、えェぇ……」
「ほら、兄上……落ち着いて。深呼吸しよう……大丈夫だから、な?」
「うう……ひぐ……」
「俺と一緒に呼吸して……吸って……吐いて……そう、その調子だ」
根気よく呼吸を繰り返していたら、徐々に兄の力が抜けてきた。叫ぶような大号泣ではなく、すすり泣きに変わっていく。
「うっ……うっ……ひっく……」
「辛かったよな、兄上……。あなたの気持ち、気付いてあげられなくて本当にすまなかった……」
「うう……ぐすん……」
「でももう我慢しなくていい。無理に強がったり、本音を隠したりする必要もない。俺はどんな兄上でもちゃんと受け入れるから……例えあなたが獣になっても、俺はずっとあなたを愛してる」
「…………」
「あなたのことは、絶対に俺が守るよ」
傍から見れば、頼りない弟かもしれない。兄を守る器量なんて備わっていないかもしれない。
だとしても、今この兄を守れるのは自分しかいないと思った。どんなに辛いことがあっても、兄はここまで自分を守り育ててくれたのだ。兄が辛い時は、自分が兄の支えになりたい。獣化の治療も――正直、どうなるかわからないけど――兄と一緒に乗り越えていきたい。
アクセルはキッチンタオルを取って、流しで軽く湿らせた。そして、血に汚れた兄の顔を拭き、穏やかな口調で言った。
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