1037 / 2012

第1037話

「さンぽ? どこに?」 「どこっていうのは考えてないが……兄上、今日はどこにも出掛けてないだろ? 泉には行ったけど」 「ウん……。なんカおでかけするきぶンじゃなくて」 「気持ちはわかるよ。でもずっと家にいてばかりじゃ身体に悪い。陽を浴びるのも大事なことだ」 「……でも、あるキながらねむくなっちャったらどうしよウ……」 「いいよ。そしたらまた俺がおぶってやる。背中で寝てもいいし……とりあえず、ちょっと外に出よう。俺も一緒だから」 「……。……わかっタ」  そう頷き、兄は再びもぐもぐとステーキを貪り食った。  口元がソースで汚れていたので、アクセルは身を乗り出してナプキンで兄の口元を拭ってやった。  こうして事細かに兄の世話をするのも、意外と楽しいものだ。獣化の進行さえなければ、いい経験になりそうなのだが。  ――獣化の治療って、一体どこで行われるんだろう……。  多分、ヴァルハラではない違う場所に隔離されるんだと思う。そこでしっかり治療できれば戻って来られるし、上手くいかなかったら破魂されるというわけだ。  具体的にどんな治療が行われるかは想像できないし、どれくらいの期間がかかるかもアクセルにはわからない。  ――俺も一緒に行って、治療のお手伝いをすることはできないのかな……。  治療というからには、一ヶ所に隔離したまま放置ということはないだろう。治療をする誰かは絶対にいるし、場合によってはそれをお手伝いする人も必要になるはずだ。それこそ、医者と看護師みたいに。  できれば自分も、常に兄の側で治療のお手伝いをしてあげたいのだが……。 「……!」  あれこれ考えていたら、突然ガタッと音がしてアクセルは顔を上げた。  再び我慢できない眠気が襲ってきたのか、兄はナイフを持ったままテーブルに突っ伏していた。危うくスープ皿に顔を突っ込みそうになっていたので、慌てて熱いものを遠ざけ兄を抱き起こす。

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