1040 / 2012

第1040話

「おう、いいぜ! また木材を切り出せばいいんだな?」 「いや、木材は大丈夫。ちょっと図書館で獣化についての本を探してきて欲しいんだ」 「あん? 獣化の本? アクセルも獣化になったのか?」 「俺は何ともないよ。でも兄上が大変なことになっててな……。今のうちに、少しでも知識を入れておきたいんだ」 「フレイン様、そんなに大変なことになってんの?」 「うん、まあ……。獣化ってヤバいんだなって、ひしひしと感じているところだ」  細かいことは説明できないが、想像以上に大変な現象だった。本能的な空腹や眠気が我慢できなくなるとは聞いていたけれど、まさか自分の腕を切って食べるとは思わなかった。  ――というか、昨日までは「ちょっと大食い」なだけでそこまで大きな変化はなかったんだけどな……。  それが、たった一日であんなに進行してしまうなんて……あまりに急展開でやや現実味がない。  するとアロイスは、顎に手を当てて首をかしげた。 「でも獣化の兆候が出てきたのって最近じゃねぇの? 今朝話した時はそんなにヤバそうな雰囲気なかったよな?」 「……まあな。でも、出掛けて帰ってきたら大変なことになってて」 「ふーん? そんなとんでもない速度で進行する獣化があるんだな。オレ、初めて聞いたわ」 「え? 普通は違うのか?」 「少なくともオレは知らないな。オレ、多分アクセルより十年? 二十年? くらい先輩だけど、昨日の今日でいきなりドカンと獣っぽくなるのは聞いたことない。普通は『最近やけにお腹が空くな?』程度の違和感から始まって、数日経っても収まらないから『変だな』と思って診断しに行ったら『獣化でした』……みたいな感じだから、フレイン様のはめちゃくちゃレアケースなんじゃねぇかな」 「そ、そうなのか……」  それは初めて知った。やはり兄の獣化は、普通よりかなり進行が早いみたいだ。  であるならば、一刻も早く治療を受けさせないと手遅れになってしまう。

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