1046 / 2012
第1046話
「……ん?」
ところが玄関に入った途端、リビングから明るい話し声が聞こえてきた。
一瞬、不審者かと思ったが、聞き慣れた声だったのでおおよその見当はついた。
アクセルは軽く溜息をつき、リビングに向かった。
「あ。アクセル、おかえりー」
「遅かったではないですか。世界樹 内で迷いましたか」
「それはないだろ。おおかた、別れが惜しかったんじゃないか?」
思った通り、そこにはミューとユーベルとジークがいた。三人とも当たり前のようにテーブルにつき、勝手に食事したり紅茶を嗜んだりしている。
――やっぱりな……。
頭を抱えたくなるのを何とか堪え、アクセルは静かに聞いた。
「……皆さん、何してるんですか」
「お留守番だよー。ついでに残ってたご飯を全部食べといてあげた。アクセルの料理は残飯でも美味しいねー」
「わたくしの優雅なティータイムを潰しておきながら、何のもてなしもせずに追い返すなんて非常識極まりありません。ここは秘蔵の酒でも提供していただかなくては」
「……ま、ちょっと気になることもあるしな。お前さんが帰ってくるまで待ってたんだ」
「は、はあ……」
気になることってなんだよ……と思いつつ、アクセルはキッチンを覗き込んだ。
三人を連れて来たアロイスは既にいなくなっており、流しにスープ鍋が置きっぱなしになっている。
綺麗に洗われていたのは助かるが、どうせあの三人が食い散らかした食器類をまとめて洗うことになるのだから、スープ鍋ひとつ汚れていても手間は一緒だな……などと思ってしまった。
――しかしまあ、わざわざ留守番してたってことは余程気になることがあるんだろうな……。
上位ランカーの情報なら聞かないわけにもいかず、やむを得ずアクセルはお気に入りのはちみつ入りレモン水をグラスに注いで持って行った。
そして空いているテーブルに座って、聞いた。
「それで……気になることって何ですか?」
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