1047 / 2012

第1047話

「んー……その前にさー、アクセル顔色悪いよ? 大丈夫?」 「……大丈夫だよ。体調に問題はない」 「そうですか。わたくしはてっきり、フレインが手酷い方法で連れて行かれてショックを受けたのかと思いましたよ」  図星を突かれて、思わずドキッとした。さすがに上位ランカーは勘が鋭いというか何というか……。 「まあ、薄々察しはつくよ。お前さんがすぐに隔離施設に向かったってことは、フレインの獣化は結構ヤバいところまで来てたんだろ?」 「え……ええ、まあ……」 「それなんだが、ヤバいのはとりあえず事実としても、昨日の今日でヤバくなるのはどう考えてもおかしいんだよ」 「……おかしいとは……?」 「獣化は、そんなに早く進行するものではないんですよ。ジークの話では、昨日の時点では普通に宴会場で食事をしていたというではないですか。それが今日になっていきなり重症化するなんて、やはり不自然です」  と、ユーベルも同調して頷く。  そう言われても、アクセルは兄の獣化しか見たことがないので、普通の獣化と比べようがないのだが。 「あー、そしたらやっぱり誰かに誘発剤盛られちゃったかなー。フレインも油断したね」 「えっ……?」  誘発剤、という聞き慣れない単語に、アクセルは顔を上げた。 「ミュー、誘発剤ってどういうことだ?」 「獣化をわざと進める薬のことだよー。一ミリも進んでない人には効果ないけど、ちょっと疑いがある人が飲むと、あっという間に獣化が進むんだー」 「いや、そうじゃなく……なんでそんなものを兄上が盛られなきゃならないんだ? というか、誘発剤なんてどこで盛られたんだよ?」 「それは知らないけどー。でも僕たち上位ランカーは、憧れの的であるのと同時に嫉妬されることもあるからー。隙あらば追い落とそうとするヤツなんて、いくらでもいるんだよー」 「まあ、治療中は当然死合いには出られないからな」  ジークが淡々と言う。

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