1049 / 2012

第1049話

「え、だめなの? 一人で食事するの、寂しくない?」 「それは……」 「食材も早く使わないと腐っちゃうしー。僕ら、呼び出されるだけ呼び出されて何のお礼もされてないしー。夕飯くらいご馳走してよー」 「そ、そうだな……わかった……」  結局断り切れず、アクセルは四人分の夕食を作る羽目になった。作る手間は兄がいる時とさほど変わらないが、食材の消費量は二倍になってしまった。いいのか悪いのか……。 「甘いデザートも作ってねー」 「わたくしはワインがいいです。フレイン秘蔵のお酒とかありませんか?」 「……デザートはともかく、秘蔵のお酒なんてないですよ……」  横からごちゃごちゃ言ってくる上位ランカーたちに辟易しつつ、アクセルは黙々と肉や野菜を切り刻んでいった。  唯一ジークだけはこれといった要望を出してこなかったが、時折こちらを眺めてニヤリと笑ってきた。……言いたいことがあるなら言って欲しい。 「……できましたよ」  めんどくさかったので、一口サイズに切ったサイコロステーキと唐揚げ、野菜入りのオムレツを全部大皿に盛ってテーブルの真ん中にドーンと置いてやる。  すると三人は飢えた狼よろしく、ステーキや唐揚げにがっつき始めた。  ――あなた達も、初期の獣化になってる気がするぞ……。  心の中でそう呟き、アクセルは完全に呆れながら三人の食べっぷりを眺めた。 「…………」  ユーベルは「宴会場で誘発剤を盛られたんだろう」と言っていた。  誘発剤はおろか獣化のことすら知らなかったとはいえ、あの時兄を止めていれば……とつい後悔してしまう。「もうすぐ夕飯なんだからあと少し我慢してくれ」と言えばよかった。  そうすれば、こんな風に憂鬱な思いをせずに済んだかもしれないのに……。  ――兄上……今頃どうしてるかな……。  ちゃんと治療を受けられているだろうか。また暴れたりしていないだろうか。いくら治療のためだとはいえ、縛られたり口枷をされるのは、やっぱりちょっと嫌だな……。

ともだちにシェアしよう!