1050 / 2012

第1050話

「フレインのことが心配か?」 「え……?」  ジークに言われて、アクセルは顔を上げた。  彼はサイコロステーキをフォークに突き刺したまま、続けた。 「まあ、愛するお兄ちゃんのことだから心配になる気持ちもわかるがな。でも、フレインはちゃんと完治して帰ってくると思うぞ。誘発剤を盛られたとはいえ、姿かたちが変わるまで進行はしてなかった。それなら破魂されることはないはずだ」 「姿かたちが……? 獣化って、見た目まで変わってしまうんですか?」 「そうだな。俺も一度だけ見たことがあるが、何かこう……気持ち悪い化け物みたいになるんだよ。なんつーか、皮膚が爛れ落ちた動物みたいな」 「それは……」  上手く想像できないが、少なくとも、人間の姿とは似ても似つかない化け物になることはわかった。きっと実物を見たら本当に気持ち悪いんだろうな……。  ――兄上がそんな姿になったら俺、いろんな意味で耐えられないかも……。  ある意味、自分の腕を切って食べる程度で済んでよかったのかもしれない。あれでもかなり度肝を抜かされたが、あれ以上のことが起きたら正気を保っていられる自信がなかった。パニックになって自分が暴れてしまいそうだ。  視線を落としていると、ジークはわざと明るい口調でこう言ってきた。 「でもフレインは、まだ人間の形を保っていた。お前さんのことも認識できてたみたいだし……そのレベルなら、完治して帰ってくるから心配すんな。ある程度時間はかかるだろうけどな」 「はい……ありがとうございます」 「そんなことよりお前さん、フレインがいない間にしっかりランク上げとけよ? あいつ、戻ってきた時には多少ランク下がってるだろうからな。もしかしたら、死合いでぶつかるチャンスがあるかもしれないぞ」 「えっ……?」 「お前さん、ずっとフレインと死合いがしたかったんだろ? だったら落ち込んでる場合じゃないぜ。未熟なところだらけなんだから、もっと鍛錬に身を入れないとな」

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