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第1051話

 言われて、アクセルは目をパチパチしばたたかせた。  ――そうか……兄上が下がって俺が上がれば、同じくらいのランクになるかもしれないんだ……。  衝撃的なことが起こりすぎたせいか、そんなことを考えている余裕は全くなかった。が、確かにジークの言う通り、兄と同等のランクになれれば死合い相手に選ばれる可能性は十分ある。ようやく兄と、命懸けの死合いを行えるのだ。これはアクセルの長年の夢だ。 「わかりました。明日から鍛錬頑張ります」 「その調子だ。落ち込んでたって始まらないからな。ならばせめて、少しでも有意義なことをしといた方がいいだろ」  なるほど、確かにその通りかもしれない。  突然兄がいなくなっても、仕事や死合いは回ってくるのだ。オーディンの眷属(エインヘリヤル)である以上、そこから逃げてはいけない。引き続き真面目に鍛錬して、少しでも自分の実力を磨いておかなければ。  ――兄上も頑張って治療してるんだ。俺も頑張らないとな……。  そう思い直し、アクセルも作った唐揚げをひとつ頬張った。ほとんど無意識に作っていたせいか、味がいつもより薄かった。 ***  結局あの三人は、好き放題に飲み食いして夜遅く帰っていった。  ミューなどは「泊まっていい?」などと言っていたが、生憎うちには客用の布団がなかったので丁重にお断りした。今度はちゃんと、新しい布団を用意しておこう。  食器の片付けをし、今日はもう休もうと思い寝室に入る。  自分のベッドはベッドメイクをした綺麗な状態だったが、兄のベッドは彼を運んだ時のまま放置だったので、慌ててベッドメイクを施した。兄が帰ってきた時、ぐちゃぐちゃの状態では気分が悪いだろう。 「……兄上……」  ついぽつりと呟いてしまう。  いない間に鍛錬頑張ろうと思っていたけれど、やはり寂しいものは寂しい。胸にぽっかり穴が空いてしまったような、急遽な感じが漂ってくる。

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