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第1056話

 アクセルは使ったバスタオルを一度全部洗濯籠に放り込み、キッチンに入って朝食の準備をした。肉や野菜を切り刻み、スープ鍋に投入してぐつぐつ煮込む。  その間にバゲットを厚めに切り、卵と牛乳を混ぜた液体にたっぷり浸し、フライパンでこんがり焼いた。スープとトーストの様子に気を配りつつ、りんごやバナナを切ってヨーグルトの中に入れる。  一人だと食事の準備もやる気が出ないが、他に食べてくれる人がいると思えば包丁を握る手にも気合いが入った。  出来上がった朝食を持って、アクセルはベランダに出た。 「ピピ、できたぞ」 「ぴー♪」  呼びかけた途端、ピピがすっ飛んでくる。地面にスープ鍋と皿に盛ったフレンチトーストを置いてやったら、ピピは早速むしゃむしゃを食べ始めた。かなり食いっぷりがよくて、余程空腹であったことが窺えた。 「スープもトーストもまだまだあるからな。好きなだけ食べるんだぞ」 「ぴー♪」 「さて、俺も食事にするかな」  天気もいいし、今日はベランダでピピと一緒に食べることにしよう。  アクセルは簡易的なテーブルと椅子を運んできて、ピピと並んで食事をした。今日のフレンチトーストは美味しく焼けた。焼き色も綺麗だ。兄にも食べさせてあげたかった。  ――兄上、施設ではどういう食事をしてるんだろ……。  ヨーグルトのフルーツを味わいながら、ぼんやりと思いを馳せる。  兄は自分と比べてかなり食べる方だから、皿にちょっと肉を盛られたくらいじゃ満足できないと思う。お腹いっぱい食べさせてもらえなくてまた暴れたりしていないだろうか。なんだか心配だ。 「やっぱり、ダメ元でいいからお見舞いに行きたいなぁ……」 「ぴ?」 「俺、心配なんだよ。兄上がどういう治療受けてるのか全然わからないからさ。グロアからは『接触は一切禁止』って言われたけど、接触せずに遠くから様子を窺うだけでもダメなのかな……」 「ぴー……」

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