1063 / 1998
第1063話
それから一ヶ月ほど経過した。
「ピピ、朝ご飯だぞ」
「ぴー♪」
お決まりの食事をベランダに持って行ったら、ピピが喜んで駆け寄ってきた。兄が治療を受けている間は、こうしてピピとベランダで食事をするのが当たり前になっていた。
「さて、いただくか」
「ぴー♪」
お気に入りのヨーグルトをもぐもぐやっているピピを眺めつつ、アクセルも自分のトーストにかじりついた。
ピピの朝食にはいつもの野菜スープとフレンチトーストの他に、フルーツたっぷりのヨーグルトを出してあげている。フルーツがたくさん入っているほどピピは喜び、嬉しそうに口元をヨーグルトだらけにするのだ。
ちなみに、自分の今日の朝食はベーコンエッグである。昨日買った新鮮な卵を割ったら、たまたまふたつの卵黄が出てきた。どうやら双子だったみたいだ。兄がいたら見せてあげたかったのだが。
――兄上、いつ帰ってくるのかな……。
あれっきり、まったく音沙汰がない。今どうしているのか、治療は順調なのか、いつ戻ってこられそうなのか……等々、そういった情報が全く入ってこないのだ。
――唯一の身内なんだから、定期的な連絡くらいしてくれないものだろうか……。
面会や差し入れが禁止されているなら、せめて施設のスタッフが「今こんな状態だからあとこれくらいかかりそうです」みたいなことを教えて欲しい。
いつ帰ってきてもいいように準備はしているけれど、今日突然フラッと帰ってこられても家にいない可能性がある。久々に家に帰るのに、肝心の弟が出迎えてくれなかったら兄だって寂しいだろう。
そういう意味でも、ちゃんと定期連絡はして欲しかった。
「定期連絡? それはされたことないな。というか俺は、連絡すべき相手もいないしさ」
たまたま遭遇したジークに尋ねてみたら、彼はあっけらかんとそう語った。
確かに、ほとんどの戦士は身内がいないことが当たり前である。兄弟揃ってヴァルハラにいて、かつ一緒に暮らしているのは今のところアクセルとフレインだけだ。
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