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第1064話

 だから、グロア側も定期連絡をするという発想自体ないのかもしれない。  とはいえ、アクセル側からすると兄の近況は絶対に知りたいところである。向こうが教えてくれないなら、こちらから聞きに行くしかないのかもしれない。  ――こうなったら、一度施設を訪問するか……。  門前払いされてもいい。とりあえず顔だけは出してこよう。例え兄に会えなくても、今どんな状況なのかは聞き出すことができる。 「ピピ。俺、今日グロアの隔離施設に行ってくるよ。やっぱり、何もわからないってのはこっちも不安になるし……様子だけでも窺ってくる」 「ぴ……」 「大丈夫だよ、無理に忍び込むようなことはしない。面会できたら嬉しいけど、そこまでの贅沢は言わないよ。兄上の治療の妨害になったら困るしな」  ピピはちょっと疑わしそうに首をかしげていたが、「夕方までには帰ってくるから」と言ったら納得したように頷いてくれた。  朝食を片付け、洗濯物を外に干してから早速家を出る。世界樹(ユグドラシル)を通って行けば、隔離施設まであっと言う間だ。さほど急ぐこともないが、もしかしたら兄に会えるかも……と思うと、自然と早足になる。 「あっ、アクセル!」  世界樹(ユグドラシル)の手前で、チェイニーと遭遇した。彼は上機嫌でこちらに寄ってきた。 「久しぶり~! どっか行くの?」 「ああ、ちょっとグロアの隔離施設に」 「えっ? まさかアクセル、獣化の症状が……」 「いや、俺は大丈夫だよ。兄上の様子を見に行くんだ」 「あれ……? フレイン様ってまだ治療中なんだっけ? もう一ヶ月くらいになる……?」 「そうだな。でも全然連絡がこないんで、様子だけでも聞きに行こうかと思ってるんだ」 「そっか……なんか大変だね。……悪いことしちゃったな」 「? 悪いこと?」  怪訝に首をかしげると、チェイニーは神妙な面持ちでこう言った。

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