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第1066話

「施設に行くなら、正面からじゃなくて一端西側に歩いて行くといいよ。しばらく歩くと小さめの公園があって、その端っこに枯れ井戸があるんだ」 「枯れ井戸?」 「そう。そこを梯子で下りていくと、地下通路みたいな場所に出てね。そこを道なりにずーっと歩いていくと、また梯子にぶち当たる。それを上っていくと、施設の裏口に出られるのさ。正面突破より確実に忍び込めるよ」 「なるほど……」  そんな隠し通路があるのか。確かに、そこを通れば施設に忍び込める確率はぐっと上がる。教えてもらえてよかった。正面突破が上手くいかなかったら試してみよう。 「ありがとう、チェイニー。本当にいろんなこと知ってて助かるよ」 「まあ、オレはこういう情報収集の方が得意だからね。ランクは鳴かず飛ばずだけど、アクセルはずっと同じように接してくれて嬉しいよ」 「まあそれはな。ランクが変わったからって、その人の中身まで変わるわけじゃないし。俺は俺だし、チェイニーはチェイニーだ。ランクがいくつになっても、俺にとってチェイニーは頼りになる友人だよ」 「……友人、ね。まあアクセルはフレイン様一筋だからなぁ。今更手遅れか」 「? 手遅れってなんだ? 何かマズいことでもあるのか?」 「いや、こっちの話。……ほら、早くフレイン様に会いに行ってあげな。一ヶ月以上も会えなくて拗ねてるかもしれないしさ」 「ああ、そうだな。ありがとう、チェイニー。行ってくる」  アクセルは早足で世界樹(ユグドラシル)を通り、グロアの隔離施設に向かった。  別れた直後、チェイニーが背後で、 「……ったく。そんなんだからどうしても憎めないんだよなぁ……」  と呟いていたのだが、アクセルには聞こえなかった。  ――さて、施設前に来てみたが……。  巨大な鉄門越しに、アクセルは施設内を眺めた。  病院のような白塗りの施設に、小窓がいくつか嵌め込まれている。大きさに対して窓の数が妙に少なく、どこか閉鎖的な雰囲気が漂っていた。

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