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第1068話

 公園として機能していない場所では、カムフラージュになっていないような気もするが……まあ、誰かが遊び回っているよりマシかもしれない。見咎められたら面倒だ。  アクセルは問題の枯れ井戸に急いだ。  枯れ井戸は思ったよりずっと小さかった。石が円柱型に積み上げられているのはいいが、大人一人分の大きさしか穴が空いていない。体格のいい――例えばランゴバルトみたいな大男では、下りて行けないだろうと思われた。  ミューくらい小柄なら余裕だと思うが、自分はそこまで小柄じゃないので、途中でつっかえないよう気を付けないと……。 「……って、これが梯子?」  申し訳程度にくっついているロープのようなものを見て、愕然とする。  もう少ししっかりした梯子がついているのかと思いきや、ただロープを編んだだけの簡素な梯子しか設置されていなかった。ロープ自体もかなり古くなってボロボロになっていて、強く引っ張ったらブチッと切れてしまいそうだった。  こんな状態のものを使って大丈夫だろうか。下りている途中で切れたら、戻ってこられなくなってしまう。それに……あまりに高いところで切れたら地下通路まで真っ逆さまだし、下手したら打ち所が悪くて死ぬ可能性も……。 「うーん……」  しばらくそこで迷いに迷い、様々なことを天秤にかけた結果、結局踏ん切りがつかずに、アクセルは泣く泣くその場を後にした。  やはり、勢いのまま突き進むのは危険だ。それで何度も失敗してきたし、今はそれをフォローしてくれる人もいない。  せめて、丈夫なロープを用意してからまた来よう。急いで編めば、明日にはまた来られるはず。  そう思い直し、アクセルは早足で家に帰った。  市場で梯子に必要な材料を買い揃え、ベランダの椅子で黙々とロープを編む。  案の定、ピピが近づいてきて「なにしてるの?」と首をかしげてきた。 「ぴー?」 「ロープを編んで梯子を作ってるんだ。急いでるからおとなしくしててな」 「ぴ……」

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