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第1069話

「明日までになるべく長くて丈夫な梯子を作らないといけないんだ。これ終わったらご飯作るから、ちょっと待っててくれ」  アクセルが集中してしまったので、ピピはその側に寝そべってしばらくおとなしくしていてくれた。  が、一時間くらい経ったところで唐突にガバッと起き上がり、騒ぎ始める。 「ぴー! ぴー!」 「なんだよ、ピピ。今忙しいんだ。もうちょっとだからおとなしくし……」 「ほう、随分忙しそうですね。客人を迎える余裕もないというわけですか」 「……えっ?」  顔を上げたら、そこには何故かユーベルがいた。  相変わらず私服のコーディネートも抜群で、今日は襟元にふわふわのファーをつけている。ゴージャスな中にも品のある服装だ。 「ユ、ユーベル様……。すみません、気づかなくて」 「いえ。そんなことより、先程から何をしているのです? 綱引きでもするんですか?」 「いえ……梯子を作ろうと思って。枯れ井戸を下りていくのに必要になんです」 「枯れ井戸を? なるほど、どこかに忍び込む予定でもできたのですね」 「えっ……!? なんでわかるんですか?」 「枯れ井戸を通って城に忍び込むのは、貴族社会では常識ですので」  ……そんなことが常識としてまかり通っているのか。貴族社会とは恐ろしいものだ。 「それにしてもあなた、随分面倒なことをしていますねぇ? 急いでいるなら、ヤドリギを使えばいいでしょうに」 「…………はっ?」  言われて、アクセルはぽかんと口を開けた。  ユーベルは呆れながら続けた。 「あなた、バルドル様からヤドリギをいただいているでしょう? あれを使って枯れ井戸を下りればいいではないですか。地道にロープを編むより余程効率がいいと思いますよ」 「…………」 「まあ、どうしても梯子で下りたいという謎のこだわりがあるなら止めませんが」 「い、いえ……。すみません、ありがとうございます」  ヤドリギを使うなんて、完全に盲点だっった。というか、ヤドリギの存在自体を忘れていた。  ――うう……俺、馬鹿すぎる……。

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