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第1082話
「あ、横穴はっけーん! ここが隠し通路の入口かなー?」
とうっ、と横穴にすべり込み、そこから顔を出して下を覗き込んでいるミュー。
何をしているのかと思っていたら、こちらを見上げてニィッと笑った。
「アクセル、下に行き過ぎないように気を付けてねー。この下、鋭いトゲトゲがあるからさー」
「えっ? そうなのか?」
「そうだよー。考えナシに下まで行ってたら、もれなく串刺しだよー。というわけで、頑張って降りてきてねー」
「う、うん……ありがとう」
ちょっと顔は引き攣ったが……そうか、この下には棘が生えているのか。まるで監視塔近くにあった幻の洞穴みたいだ。
一度目にすぐさま下りていかず、慎重に引き返したのは正解だったかもしれない。途中でロープが切れていたら、それこそ下で串刺しになって一巻の終わりだった。
――やっぱり、勢いのまま突っ走っちゃいけないな……。
どういうわけか知らないが、施設側は明らかに警戒を強めている。ここから先、隠し通路を通っている間も何かしらの罠が仕掛けられている可能性は高いだろう。無傷で施設に辿り着くためにも、慎重に進まなければならない。
「…………」
アクセルはヤドリギを取り出し、穴の淵に引っ掛けて蔓が伸びるよう念じた。ヤドリギはスルスルと緑色の蔓を伸ばし、ニョキニョキ穴の奥まで入っていった。
「……よし」
念のため、蔓の太さを確認し、自分の体重がかかっても千切れないことがわかってから、アクセルはゆっくりと井戸の中に入っていった。
――う……やっぱり結構狭い……。
ミューのような小柄な体格ならともかく、自分のような普通の成人男性には辛い場所である。ちょっと腕を動かすだけで肩が壁にぶつかって痛いし、足もほとんど動かせない状況だ。蔓にしがみつきながら、力を調整しつつずるずる滑り降りるくらいしかできない。
どうせ隠し通路として使っているなら、もう少し通りやすい大きさにすればいいものを……。
――しかし、本当に施設では何が行われているんだろう……。
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