1083 / 1998
第1083話
外部との接触を一切禁じ、身内への連絡すら拒んでいる。そんな状況、どう考えてもまともじゃない。あまり想像したくないけど、本当によからぬことをやっている可能性はゼロではない。
――兄上……どうか無事でいてくれますように……。
ミューの言った横穴までずるずる滑り下り、足を引っ掛けて横穴に侵入する。横穴自体もかなり狭く、芋虫のように這って通らなければならなかった。カビっぽい臭いがするし、湿った泥で服が汚れていく感覚がする。
――ああもう……! 拡張工事したいぃ……!
こんなに通りにくいとは思わなかった。隠し通路なんて言っているが、これではいざという時に使うことも憚られる。
というか、この通路は本来施設側の者がこっそり外に出ていく時に使われているものじゃないのか。こんなに通りにくいんじゃ、そもそも外に出ようなんて思わなくなるんじゃないか。一体何のためにこんな隠し通路作ったんだ? 意味がわからない。
「あ、やっと出てきた。お疲れアクセルー」
「え……うわぁっ!」
急に開けた場所に出たかと思ったら、あるはずの地面がそこになく、這っていた手が空を切った。そのままバランスを崩し、アクセルはごろんと地面に転がり出た。予測してなかったため、受け身も取り損ねた。どうやら、出た場所が地面から一メートルほど高い位置にあったらしい。
「いって……」
幸い足は挫かなかったが、一メートルであっても固い地面に落ちると痛い。身体中泥だらけだし、施設に辿り着く前に既にボロボロになりつつあった。
こんな状態で本当に無事施設まで行けるんだろうか……。
「あー、そこ気を付けてっていうの忘れちゃった。ごめんねー」
一方のミューはかすり傷ひとつ負っておらず、ピンピンした状態で鎖付き鉄球を下げている。体格の差もあるが、今のルートを通っても全く汚れていないのはさすがの身のこなしという他ない。
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