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第1084話

「んじゃ、さっさと行こー。今度は何が出てくるかなー?」  どこか楽しそうに歩いていくミュー。  ――いやもう、何も出てこないで欲しいんだが……。  心の中でそう祈りつつ、アクセルも立ち上がってミューの後ろをついていった。  隠し通路の中は薄暗くて、高さもアクセルの身長ぴったりくらいしかなかった。そのせいで、時々出っ張っている石に勢いよく頭をぶつけ、目の奥に火花が散ることもあった。  目が暗さに慣れてからはだいぶ避けられるようになったけれど、額のあちこちがヒリヒリしているところからして、切り傷になっているところもあると思われる。今の自分はきっと、傷だらけの泥だらけになっているんだろう。なんだか、このままの格好で兄に会うのが申し訳なくなってきた。  心の片隅で「泉に入りたい……」と思いつつ、アクセルはひたすら前に進んだ。  一方のミューは、遊び半分で探検しているみたいで、足取りも軽く、放っておくとすぐに先に進んでしまう。時々後ろを確認して立ち止まってくれるからいいものの、それがなかったらとっくに置き去りにされていただろう。  ついてきてくれたのはありがたいが、この状況――協力して進んでいるというより、ミューの遊びに付き合わされている下位ランカーみたいに思えてくる。……いや、施設に忍び込みたいのはアクセルの意思だけど、どうせ助力を乞うならジークみたいな常識人にした方がよかったかもしれない……。  ――……いかん。なんか余計なことばかり考えている……。  こういう、しょうもないことを考え始めるのは心身の疲労が蓄積してきた証拠だ。元気な時ならこんなこと考えないし、兄の様子を窺いに行くことだけに集中できる。  多分、隠し通路を抜けて施設に到着できれば気持ちも上向いて来ると思うが……果たしてこの通路、どこまで続いているのだろう。  単純に考えれば、施設から公園までの直線距離分はあるということだから、もうそろそろ出口に辿り着いてもいい気がするが……。

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