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第1085話

「あれ、また変な穴があるー」  先に行っていたミューが、唐突に声を上げた。  穴のあるところは行き止まりになっていて、穴に入る以外道はない。枯れ井戸から降りてきた横穴よりは大きかったものの、そこまで余裕のある大きさでもなく、自分が入ったらまた傷だらけの泥だらけになる自信があった。それだけで一気にげんなりしてきた。  けれどミューは相変わらず楽しそうに穴を覗き込みつつ、 「もしかして、ここを通過したら施設に出ちゃう感じ? なんだー、地底人とか狼とか出てきてくれるかと期待してたのにー」 「……いや、期待しなくていいから」  ミューなら地底人でも狼でも軽くあしらえると思うが、生憎自分は既に満身創痍である。できることならこれ以上何事もなく、穏便に施設に到着したい。  軽く溜息をつき、先行して穴に入っていったミューを見送り、しばらくしてアクセルもその中に侵入した。侵入した瞬間、泥くさい臭いが鼻についてますますうんざりしてきた。  なるべく余計なことは考えないようにしつつ、横穴を進んでいく。  何メートル進んだのかわからないが、しばらくすると地面が途切れる場所に行き当たった。ここからまた上への道が続いているみたいだった。ロープはないが、代わりに丈夫そうな鉄の梯子がかけられている。  ――なんで最後だけ梯子がかかってるんだよ……。  今まで何もなかったのに、何故最後の最後だけ梯子をかけておくのか。どうせやるなら、最初から最後まできちんと人が通れるように整備すべきだ。まったく、中途半端な。  闇雲な怒りを覚えつつ、アクセルは当たり前のように梯子に手をかけた。  そこから当たり前のように上っていこうとした瞬間、上から何か重くて固いものが落ちてきた。すんでのところで避けたが、それはミューの鎖鉄球だった。こんな時になんのつもりだ。 「おいミュー、危ないだろ。何してるんだよ」 「あー、ついでだから引き上げてあげようと思ってー。その梯子、使わない方がいいしー」 「……えっ?」

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