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第1094話
「ありゃ。誰かと思ったらお前は……」
「兄上……?」
見間違えるはずもない。整った美貌と柔らかそうな金髪、着ている服は病衣らしきものだったが、それでも兄・フレインに間違いなかった。
「兄上……!」
アクセルは小太刀を放り出し、兄に駆け寄って勢いのまま抱きついた。
「兄上、よかった……やっと会えた……!」
「ふふ、お前は相変わらず元気そうだね。わざわざ私に会いに来てくれたのか」
「そうだよ。兄上、全然帰ってきてくれないし、施設側からも何の連絡もないし……。それで、いても立ってもいられなくなって隠し通路を通ってここまで……」
「そうか、大変だったね。でも、久しぶりに会えてお兄ちゃんは嬉しいよ」
「俺も……ずっと会いたかった。早く兄上と元の暮らしに戻りたかった」
甘えるようにぎゅっと抱きつき、軽く頬に口づける。
ちょっとやりすぎかなとも思ったが、再会の挨拶だと思えばこれくらい許されるだろう。
「ところで兄上、ミューを見なかったか? さっき、隣の部屋で白い壁に飲み込まれてしまって……。ミューだからそこまで心配いらないかもしれないけど、やっぱり捜しに行きたいから一緒に来てくれないか?」
「ああ、そうなんだ? それは大変だね。じゃあ他のみんなにも手伝ってもらおうかな」
「……え? 他のみんなって……?」
誰か仲間でもできたんだろうか。まあ、治療中に同室の人と仲良くなるのは、さほど珍しいことではないが。
そう思って軽く考えていたら、「他のみんな」とやらが次々部屋に戻ってきた。
「……えっ?」
彼らを見た瞬間、驚愕で身体が固まってしまう。
現れたのは、兄と瓜二つの別の人物だった。顔の造作も髪の色も形も全部同じ。しかもそれが二人もいる。
「あ、兄上……? え、どういう……?」
咄嗟に抱きついていた兄から離れようとしたが、腕の力を込められて強く抱き留められてしまう。三人の兄をそれぞれ見比べたが、全員見事に兄そのもので、どこが違うのか全くわからなかった。
これは一体どういうことだろう。
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