1107 / 2012

第1107話

「ギェアアァァア!」  雄叫びと一緒に、何かがスパスパ斬られている音も……している気がする。  が、残念ながら今のアクセルは意識が朦朧としていて、聴覚でさえも何かノイズがかかっているかのようにきちんと音を拾えていないでいた。  いつもなら兄の雄叫びを聞くだけで血が騒いでくるのに……もうそんな体力も残っていない。  ああ……ちゃんと状況確認しないとなぁ……また兄上に怒られてしまう……「お前の危機管理能力はどこ行ったの」って叱られてしまう……何度も同じことで叱られたくないんだけどな……やっぱり俺は、昔からちっとも成長していないってことかな……。 「アクセル!」  バン、と扉が開き、兄の声がより大きく聞こえてきた。部屋に入ってきた侵入者も、兄と同じ姿形をしている。ただ、着ている服はいつもとちょっと違って、襟元にもふもふのファーがくっついていた。なんだろう、施設内での新しいファッションだろうか。  一方、アクセルを囲んでいた兄たちはいつの間にか離れており、ベッドから降りて侵入者に対し身構えていた。とはいえ、彼らは全員武器を持っていないので、身構えるにしても丸腰状態である。  ああ、だめだ……自分も起き上がって兄たちと対峙しなければならないのに、身体に力が入らない……。 「お前たち……コピーの分際で、よくも私の弟を……!」  兄の怒りの声さえ遠くに聞こえる。  兄上、そんなに怒らないでくれ。全ては油断した俺が悪いんだ。誰が本物か判断できず、状況に流されてしまった俺の責任なんだ。  他の兄上は悪くないから、どうか穏便に話をつけて……。 「コピーの分際でって何? 私たちだって本物だよ」 「お前、自分がオリジナルだって思い込んでるだけじゃないの?」 「お前ばっかりずるいよ。自由に外に出て弟とも仲良くして幸せに暮らして……」 「やかましい! 弟に手を出すヤツは誰であろうと許さない! 全員死者の国に送ってやる!」  また兄が雄叫びを上げた。

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