1110 / 2012

第1110話

「なんかねー、飲み込まれた壁の先に、地下に通じる怪しい部屋があってー」  と、ミューが起こったことを説明してくれる。 「そういう部屋って、だいたいテンプレ的に怪しいことしてたりするじゃない? ここも何かやってるのかなーと思って覗きに行ったら、なんとびっくり! フレインと同じ顔をした人がいっぱいいたんだー。しかも歩き回ってたわけじゃなくて、みんな大きい試験管? みたいなところに入っててさー」 「大きい試験管……」  実験体が培養されているガラス管みたいなものだろうか。培養液の中に裸の実験体がいて、目を閉じて眠っているイメージがある。  ミューが続けた。 「なんかもう、見るからにヤバいことしてるなーと思って観察してたら、施設の人に見つかっちゃってー。ついでだからと思って話を聞き出してみたのねー。そしたら、案の定ヤバいことしてるってわかったから、とりあえず部屋ごと全滅させてきたー」 「部屋ごと全滅って……」 「職員と、実験器具と、あと眠っていたコピーもね。ちょっと可哀想な気もしたけど、これ以上変な実験を続けられるよりいいのかなーって」 「変な実験……?」 「どうもグロアは、私を量産して母上を復活させられないか実験していたみたいで」  兄が呟くように口を開いた。  母上――というのは予言の巫女のことだが、それを復活とはどういうことだろう。彼女はラグナロクで石碑を破壊して消滅してしまったはずだ。 「治療中に知ったんだけど、グロアと母上はかなり仲がよくて、唯一無二の親友だったみたいなんだ。あの性格の母上と気が合うなんてだいぶ信じられないけど……とにかく、ラグナロクで母上が消えてしまってグロアは相当悲しんだらしい」 「いや、あの……ちょっと話についていけないんだが……。母上と仲良しで、母上が消えて悲しんだところまではわかる……。でも、そこから何故兄上を量産しようという発想になるんだ? 兄上をたくさん作ったって、母上を復活させることはできないだろ」

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