1111 / 2012
第1111話
「……それはわからない。ここはアース神族の世界 だし、私たちには想像もつかない方法で誰かを復活させることも可能なのかもしれない」
「…………」
「とにかく、母上が消えてからグロアは妙な実験に傾倒するようになったそうだ。以前は怪我や病気をしっかり治療する、優しい女性だったんだけど……大切な人がいなくなって様変わりしてしまった女性の典型かな……」
「そう……か……」
大切な人がいなくなって様変わりする。アクセルも、気持ちだけはわかるかもしれない。
自分だって兄がいなくなったらきっと耐えられないだろうし(というか、たった一ヵ月離れ離れだっただけでも我慢できず、こうして施設に侵入してしまった)、何とか蘇らせる方法はないか調べまくったと思う。死者の国に行って女王に直接尋ねたり、最高神・オーディンに掛け合って「何でもするから、もう一度兄に会わせてください」と懇願したと思う。
そう考えると、グロアのやったことを頭ごなしに非難することはできない。
「それで、施設の地下で私のコピーを独自に作ってあれこれやってたみたいだけど、いろいろやっていくにつれて、どうしても本物のサンプルが欲しくなったらしくてね」
と、兄が続ける。
「それで、どうにか本物を呼び寄せられないか考えた結果、獣化させて施設に入れてしまえばいいと思ったみたい。それでわざと私を獣化させて、まんまと施設に閉じ込めることに成功したわけだ」
「わ、わざと……?」
「私の獣化は、宴会場の食事に誘発剤が仕込まれていたことが原因だ。でもそれをやったのは戦士 の誰かじゃなく、ここの職員の一人だったんだ。グロアに命じられてヴァルハラに忍び込み、タイミングを見計らって食事に誘発剤を盛ったらしい」
「そんな……」
「正直、よくやるなと思うよ。私は私だし、コピーはコピーだ。いくら母上の記憶を擦り込んだところで、母上にはならないと思うけどね」
「記憶を擦り込む……?」
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