1121 / 2012

第1121話

 すると、兄は苦笑しながら言った。 「私のことは気にしないで。私はお前が元気でいてくれるのが一番なんだから」 「……だけど」 「まあでも、私も疲れたから早めに寝ようかな。今日は久しぶりに一緒に寝ようか」 「うん……」  アクセルは寝間着に着替え、兄と一緒に寝室に向かった。  自分のベッドに入った直後、当たり前のように兄もベッドに潜り込んできたので、少し気分がざわついた。  あんなことがあった後だから、正直今夜は遠慮したいのだが……。  すると兄はこちらをポンポンと撫でながら、優しく微笑んだ。 「大丈夫、今日は添い寝だけ。他には何もしないよ」 「え……」 「さすがにそういう気分じゃないでしょ。仲良くするのは明日以降にしようね」 「は、はい……」 「あ、それとも期待してた? お前がどうしてもやりたいっていうなら、お兄ちゃんも喜んで相手するよ?」 「いや、大丈夫! 今日はこのままおとなしく寝るから!」  そう言って、わざと寝返りを打って兄に背を向ける。  兄は小さく笑いながらも「じゃあおやすみ」と言って、静かに目を瞑った。 「…………」  アクセルも一生懸命目を瞑って眠ろうとしたが、どうも気持ちがモヤモヤして眠れない。静かにしていると一人でぐるぐるいろんなことを考えてしまって、余計に目が冴えてしまった。 「眠れないのかい?」  兄が背後から声をかけてくる。やはり兄は、弟の様子をよくわかっているようだ。 「眠れないなら、ホットミルクでも作ってこようか? ハチミツ入りの美味しいやつ。確かユーベルからハチミツもらったんだよね?」 「うん……」 「じゃあちょっと作ってくるよ。待っててね」  返事を聞かないうちに、兄はサッとベッドから下りてキッチンに走り、数分後に二人分のホットミルクを持って戻ってきた。 「はい、どうぞ。熱いから火傷しないようにするんだよ」 「……ありがとう。いただきます」  マグカップに口をつけ、一口ミルクを味わう。少し多めにハチミツを入れているのか、いつもより甘く感じた。

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