1122 / 2012

第1122話

「お前とこうしてホットミルクを飲むのも、久しぶりだね」 「……そうだな」 「他に食べたいものない? お兄ちゃん、腕を振るっちゃうよ」 「いや……今のところは特に思いつかないな。兄上が食べたいものを作ってくれれば、それでいい」 「そうかい? じゃあ明日は鍋にでもしようかな。お前と仲良くつつく鍋は美味しいからね」  そんな他愛のない話題を振って来る兄。  気を紛らわせようとしてくれているのがわかって、それが逆に少々申し訳なく感じた。兄の方が大変な目に遭ったのだから、本来は自分が気を遣わなくてはいけないのに。  ――俺はいつも守られてばかりだな……。  兄を助けに行ったつもりが、逆に罠に嵌まって兄のコピーたちに犯された。意識朦朧となっていたところを助けてくれたのは兄だし、その後グロアと対面した時も終始自分を守ろうとしてくれた。  結局自分はほとんど何もできず、コピーの兄たちともロクに話ができないまま、死なせてしまって……。 「…………」  また涙が溢れそうになり、アクセルは手で目元を拭った。ここで泣いたら兄に余計な心配をかけるだけだ。泣くのは、自分一人の時にしよう……。 「ひとつ、わからないことがあるんだ」  ごまかしの意味も込めて、アクセルはわざと話題を変えた。 「最後……グロアさんは、なんであんなにあっさり心変わりしたんだろう……? 自分で言うのも何だけど、俺は別に説得しようだなんて思ってなかったんだ。ただ、自分の考えをぶつけただけだった。それなのに……」  何故か急に毒針を下ろされ、それどころか自殺までされてしまった。  もちろん、どうしても話し合いができなかったら力ずくでどうにかするのもやむを得ないと考えてはいたものの、自分で自分に薬を注入するなんて思ってもいなかったから、正直かなりびっくりしたのだ。 「……まあ、それに関しては私もちょっと意外に思ったけどね」  と、兄が苦笑する。

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