1123 / 2012
第1123話
「ただ……あの時のお前を見て思ったのは、お前は意外と母上に似てるってことだね」
「えっ……?」
自分と母が似ている……とは、どういうことだろう。自分は兄と違い、母と似ているところなんて何一つないと思っていたのだが。
兄は静かに続けた。
「あんな風に、わけのわからない理屈を堂々と相手に言ってしまえたり、相手の事情を考えずに思ったことをストレートに言えちゃうところとか、母上そっくりだよ。言っている方はごく当たり前のつもりなんだろうけど、相手にとっては突拍子もない提案に聞こえる。考えてみれば母上も、そういう言動が多かった」
「そう、かな……」
「そうだよ。生まれたばかりのお前を抱えて私に会いに来た時も、よくわからない理屈をこねてお前を置いて帰ったな」
「…………」
「もちろん、弟ができたのはすごく嬉しかったからそこはいいんだけど。ただ、お前があそこで突拍子もないことを言っているのを聞いて、何だかんだでお前もあの母上の子供なんだなって思ったよ。もしかしたらグロアは、お前の中に母の姿を見たのかもしれない」
「……そうなのかな……」
「きっとそうだよ。何だかんだでお前にも、母上の血が流れてるんだね。ちょっと安心した」
「……!」
そうか。こんな自分も、兄同様「予言の巫女の血」を受け継いでいるのか。兄と同じ血が流れていると考えていいのか。
――よかった……。
アクセルは小さく口角を上げた。
兄は見るからに母に似ているし、力も強くて勘も鋭い。
一方の自分はそれほど母に似ていないし、力そのものも凡人の域を出ない。兄と比べても似ているところが本当に少なく、それがずっとコンプレックスだった。もしかしたら自分は兄と血が繋がっていないんじゃないかと、悩んだことも一度や二度ではない。
でも……今の言葉を聞いて安心した。
自分と兄は、確実に血の繋がった兄弟だ。今回のことでそれが確信できた。
ともだちにシェアしよう!