1126 / 2012
第1126話
「兄上……」
「結果的には残念な結末になっちゃったけど……お前がそうやって自発的に墓を作ってくれるのは嬉しいよ。これなら、私が死んだ時も立派なお墓を作ってくれそうだしね」
「兄上は死なないだろ」
兄が死んだらちゃんと棺に入れて復活させるし、仮に死者の国に送られたら女王 に頼んでヴァルハラに戻してもらうつもりでいる。兄自身の墓を作ることはまずない。
アクセルはちょっと苦笑し、もう一度墓の前にしゃがみ込んだ。
「……ありがとう。じゃあこの墓、もっと日当たりのいい場所に移動させるよ。死んでからも日の目を見られないのは可哀想だしな……」
生きている間は一度たりとも施設から出られなかったコピーたち。せめてこれで、少しでも太陽の下に出られればいいなと思う。
「ところでお前、今日は何か予定あるの?」
墓を移す作業をしていたら、兄が話を振ってきた。
「私、しばらく隔離されてたからスケジュール確認しに行かないといけないんだよね。次の死合いがいつあるかもわかってないし」
「ああ、そうか……。じゃあそれを確認しに行って、それから鍛錬でもするか?」
「鍛錬~? せっかく久しぶりに帰ってきたのに鍛錬かぁ……。同じ鍛錬なら、私は山歩きの方がいいなぁ」
「そ、そうか……。じゃあ掲示板を見に行ってから、山歩きでもしに行くかな」
山歩きと聞いた途端、ピピが「もちろん連れてってくれるんだよね?」とでも言うかのようにこちらを見てきた。ピピも久々の山歩きでちょっとウキウキしている。
「わかったよ、ピピも一緒に行こう。山歩きはみんながいた方が楽しいもんな」
「ぴー♪」
「よし、そしたら朝ごはん食べて予定確認して出掛けるか。すぐ用意してくるから、ちょっと待っててくれ」
アクセルは花束と一緒に買った卵や牛乳をキッチンに広げ、朝食用に簡単なホットケーキを作った。ピピの好物はフレンチトーストだが、たまにはホットケーキもいいだろう。
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