1130 / 2012
第1130話
「もういっそのこと、今のポイント計算方法を見直した方がいいんじゃないかとも思うんだけどね。単なるランクの上下じゃなくて、その人とどれだけランクが離れているかでポイントの量が決まるとかさ」
「ああ、その方が現実的かもしれないな。ただ、計算が面倒になってわけがわからなくなる人も増える気がするが」
戦士 は腕っぷしは保証されているものの、頭の方は首をかしげてしまう人も少なくない。時代や文化が様々なので、出身国によっては読み書きや計算といった教育を受けられなかった人もいるのだ。
すると兄は笑いながら言った。
「そういう人は、自発的に計算ドリルでもやって頑張ってもらうしかないな。まあとにかく、面倒なポイント操作をしないといけないのは確かだ。わけがわからなくなってきたら、お前も計算手伝ってね」
「あ、ああ……それはもちろん……」
そんな会話をしながら、アクセルは作った軽食をバスケットに入れて上から布を被せた。そして庭で待っていたピピを連れて、三人で山に向かった。
ピピは久しぶりの山が嬉しかったのか足取りも軽く、道中もウキウキ飛び跳ねていた。
「ピピちゃんは元気だなぁ……。やっぱり毎日庭を駆け回ってると体力も違うんだね」
と、兄が長い息を吐く。見れば額にうっすら汗が滲んでいた。
「兄上、大丈夫か? 今日は無理しないで、ゆっくり自分のペースでいいからな」
「ありがとう。……しかしここ、まだ中腹だよね? わかってはいたけど、一ヵ月も施設にいると体力もがくっと落ちちゃうんだなぁ……。なんかちょっとショックだ」
「それはしょうがないよ。ロクに鍛錬もしてないんだから、誰だってそうなるさ。でも兄上は元々強いから、すぐに感覚を取り戻せるはずだよ」
「だといいけどねぇ……。これだから獣化は面倒なんだ」
獣化そのものも大変だが、完治した後もいろいろと面倒なことが起こる。戦士 にとって、体力や筋力が落ちているのは致命的だろう。
また一から鍛え直しかと思うと、げっそりしてしまう気持ちもわかる。
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