1131 / 2012

第1131話

 そんな兄を宥めるように、アクセルは言った。 「まあまあ。そしたら一緒に鍛錬すればいいじゃないか。兄上と鍛錬する機会に恵まれたと思えば、俺は嬉しいぞ」 「そう? 今までもそこそこ一緒に鍛錬してた気がするけど」 「してたけど……今までは、その……兄上の方が圧倒的に強かったから、一緒に鍛錬しても置いて行かれることばかりだっただろ? 正直、それはちょっと寂しいと思ってたんだ。いつまでも追いつけなくて悔しいって気持ちもあったりして」 「それはまあ、ねぇ……」 「でも、これからは同じペースで鍛錬ができる。まあ、今回は俺が強くなったんじゃなくて兄上の体力が落ちただけだから、すぐ引き離されそうだけどな……。それでも、俺にとっては大きなことなんだ。考えてみれば、兄上と同じペースで鍛錬できたこと、今までなかった気がするし」 「そうだったかな……」 「そうだよ。兄上は複雑だろうけど、俺にとっては悪いことばかりでもない。だからまた一緒に強くなっていこう。その……ポイント操作? についてはよくわからないが、俺に協力できることなら協力するから」  そう肩を叩いたら、兄は噴き出したように笑った。そしてこちらの手を握り返し、言った。 「うん、確かにお前の言う通りだ。お前と同じ位置に立ったと思えば悪くない。ある意味、これでようやく対等になれたってことなのかもね」 「そうだな。とりあえず、頂上まで登ってしまおうか。息が上がっているならゆっくりでいいぞ。そこでお昼を食べて、早めに下山しよう。初日だから無理は禁物だ」 「わかったよ。体力もたなくて悔しいけど、また近いうちに来ようね。……ピピちゃん、久しぶりの山なのにゆっくりできなくてごめんよ」 「ぴー」  ピピは首を横に振り、「気にしないで」と身体を擦り寄せてきた。兄の体力が回復したら、また三人で山歩きに来よう。

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