1135 / 2012
第1135話
「ぴー!」
ベランダからピピがしきりに鳴いてくる。久々の山歩きでいつもよりお腹が空いたのか、「はやくごはんちょうだい」と急かしてきた。
「ほらピピ、できたぞ。今日は野菜のスープパスタだ」
ペンネを茹でるのと同時に、ピピ用の野菜スープを煮込んでおいて、茹で上がったペンネを後から入れたのだ。
いつもの野菜スープにペンネを入れただけだが、たまにはこういうのもいいだろう。
「ぴー♪」
鍋を庭に出してやった途端、ピピは大喜びで鍋に顔を突っ込み、ペンネ入り野菜スープを食べ始めた。
その食べっぷりを横目で見つつ、アクセルは自分たちのパスタを皿に盛り、イノシシ肉のボロネーゼを上からかけた。
「わあ、美味しそう。お肉たっぷりで嬉しいよ」
兄が髪を拭きながら戻ってくる。
アクセルは皿とフォークを並べながら言った。
「軽くていいって言ってたから、ステーキみたいに焼くんじゃなくてソース状態にしてみたんだ。そろそろイノシシ肉、全部消費してしまいたくて」
「なるほど。確かに今はステーキよりパスタの気分だ」
「他にもリクエストがあったらいつでも言ってくれ。それじゃ、いただくか」
二人で他愛のない会話をしながら、向かい合って食事をした。
兄は楽しそうに話をしていたが、アクセルが全部食べ終わっても三分の一くらいはパスタが残ったままだったので、口に合わなかったのかと少々不安になった。
「……ごちそうさま」
「え? もういいのか?」
「うん、今日はお腹いっぱい。残った分は明日の朝食べるよ。美味しく作ってくれたのに、ごめんね」
「いや、大丈夫だけど……」
「私は早めに寝るとするよ。おやすみ」
ガタッと席を立ち、兄は自分のマグカップだけ持って寝室に入っていった。
「兄上……」
残されたアクセルは、使った食器を丁寧に洗い、兄が残したパスタにラップをしてキッチンに置いておいた。
――やっぱり兄上、元気ないな……。
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