1139 / 2012

第1139話

 その間に、アクセルはポットでお湯を湧かし、昨夜兄が残したパスタを温め直して、自分の分のトーストを焼いた。朝食には熱いコーヒーを淹れるのが、個人的な習慣だ。  ピピには野菜をザクザク切ったサラダに、トーストとチーズを添えてやった。  ――あとは……。  一度庭に出て、作ったばかりの兄たちの墓――もちろん、コピーの兄だが――の前まで行き、お供えした花を取り替えて墓石を軽く水拭きする。  そしてヤギの蜜酒の瓶を墓前に供え、祈りを捧げて家に戻った。  テーブルに食事を並べていると、タイミングよく兄が浴室から出てきてくれた。 「わあ、今日も美味しそうだね」  と、嬉しそうに言う。 「このコーヒーの香り、たまらないな。これぞ朝食! って感じがする」 「ああ。俺もコーヒーの香りがあると、何となく落ち着くんだ」 「じゃ、早速いただこうか。今ならいっぱい食べられそうだよ」  お互いの席につき、向かい合ってゆっくり食事をとる。宣言通り、兄は昨夜残したパスタを完食し、トーストも二枚平らげ、サラダも残さず食べてくれた。  朝鍛錬をしたせいかもしれないが、食欲が少し戻ってきたみたいでちょっと安心した。 「ごちそうさま。やっぱりお前のご飯は美味しいね」  満足げにコーヒーを啜る兄。 「これだけ食べれば、食後の鍛錬も頑張れる気がするよ。お前は今日、何するの?」 「あー……そうだな。買い物や洗濯を終わらせて、残りの時間で鍛錬かな」 「そっか。じゃあ食器の片づけは私がやっておくから、お前はシャワーでも浴びておいで。ジョギングの汗、まだ流してないだろう?」 「わかった、そうさせてもらうよ」  席を立ち、バスタオルと着替えを用意してアクセルは軽く汗を流した。  ――今度はみんなで、外の露天風呂に入ってみよう。  せっかくヒノキを切り出して一から作ったのだ。頻繁に使わないともったいない。一緒に湯浴みできれば、ピピも喜ぶ。  今日の買い出しでは、食料の他に石鹸やタオル等の日用品も購入してこよう。

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