1140 / 2012

第1140話

 そんなことを考えつつ、髪と身体を洗って浴室から出た。  それからいつもの服に着替え、本日の家事を全て終わらせることにした。  まずは溜まった洗濯物を全部籠に突っ込み、オーディンの館近くの魔法のドラムに入れに行く。洗濯物をしている間に日用品の買い物に行き、ついでに食料や嗜好品も買い込んだ。  帰りに綺麗になった洗濯物を回収し、世界樹(ユグドラシル)前の掲示板でスケジュールを確認する。今週も死合いは特になく、仕事も簡単な狩りが入っているだけだった。今週は平和な一週間になりそうだ。  ――あ、そうだ。ミューにお礼のお菓子を作ってあげないと……。  例え一人でも忍び込むつもりだったが、ミューがいてくれたおかげで隠し通路も何とか無事に通過できた。彼がいなかったら、施設に辿り着く前に死んでいた可能性も否めない。  ユーベルにもらったハチミツもあるし、あれで焼き菓子でも作ってやろう……と思いつつ、アクセルは家に帰った。 「兄上、ただいま……って、あれ?」  家にいたはずの兄の姿がなかった。庭で鍛錬しているのかと見に行ったけれど、そこにも兄はいない。  もしかして鍛錬場にでも行ってしまったんだろうか。行くなら行くで構わないから、書き置きくらい残しておいてくれればいいのに。  ――まあいいや。俺は俺のやるべきことをやろう。  洗濯物を綺麗に畳んでタンスにしまい、軽く部屋の掃除をしてから庭に出た。  準備体操をし、庭をランニングしてから素振りや腕立て伏せを行う。太刀筋もだいぶブレなくなってきたし、力の入れ具合もだんだんわかってきた。もう少し鍛錬を続ければ、兄のように綺麗な太刀筋になっていくだろう。  走り込みでスタミナもついてきたから、あとは体幹がしっかりすれば実力も安定してくると思うのだが……。  ――体幹も鍛えたいけど、さすがにあれを使うのはちょっとな……。  ボールが何個も連なったいかがわしい道具。強引に使われたことを思い出すと、かなり恥ずかしかった。  確かにそれなりの効果はあったが、もう二度と使いたいとは思わない。

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