1147 / 2012

第1147話

「それもあるけど、お前と鍋をつつけるのが楽しみで。鍋自体も久しぶりな気がするんだよね。あ、間違っても獣化の初期症状じゃないから安心してください」 「ならよかった」  治ってすぐに獣化するのは勘弁して欲しい。もうあんな経験は二度としたくない。  切り刻んだ具材と鍋を食事テーブルに持っていき、そこでぐつぐつ煮込みながら二人で仲良く食事した。  途中、ピピが「ピピもたべたい」と鳴いてきたので、じっくり煮込まれた野菜の残りと炊いたご飯を混ぜて雑炊状態にしてやった。味が出て美味しかったらしく、ピピはぺろりと平らげてしまった。 「うん、美味しかった。満足満足」  と、兄が自分の腹を撫でながら言う。 「鍋は肉をいっぱい食べられるからいいね。今度はすき焼きがいいなー」 「……いいけど、野菜も少しは食べた方がいいぞ」  鍛錬した後は肉をたくさん食べたくなるけど、アクセルとしては野菜もきちんと食べて欲しい。栄養バランスが偏ってしまう。  まったく兄上は……と内心呆れつつ、早めに就寝しようとベッドに入った。  兄も少し遅れて寝室にやってきたが、当たり前のようにこちらのベッドに潜り込んできたのでちょっとびっくりした。 「あ、兄上? どうしたんだ、今日は」 「いや、なんか調子いいからやりたくなって。久しぶりだからいいよね」 「え!? いや、久しぶりって言われても俺は……」  言いかけたところで、当たり前の事実に気づく。  ――そうか、この兄上とは本当に久しぶりなんだっけ……。  アクセルが施設で身体を合わせたのは、あくまでコピーの兄三人である。本物の兄とは触れ合っていないし、ましてや一対一で抱き合うのは本当に一ヵ月ぶりだ。  というか、コピーの兄たちにやられた時は、半分レイプみたいな感じだったからな……。 「それとも、お前はそんな気になれない? 鍛錬しまくって疲れちゃった?」

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