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第1160話

「見た目や性格が似ていなくても、俺と兄上は確実に血が繋がっている。というか、似てないからこそ相性がいいのかなと思った。……本当に今更だけど、気づけてよかったよ」  アクセルは顔を上げ、水回りを掃除している兄を見た。 「俺はこんなだから、またいろんなところで落ち込むと思う。迷惑をかけることもあるだろう。それでもよければ、これからも側に置いてくれ」 「もちろんだよ。今更言わなくても、私はお前を離したりしないさ」  そう朗らかに答え、冗談交じりに付け足す。 「何ならここで証明してあげようか? お兄ちゃんがどれだけお前を愛してるか、またじっくり身体に教え込んで……」 「えっ!? い、いや、それはいい! 昨日やったばかりだし!」  アクセルは逃げるようにキッチンから出て、代わりにリビングの床を水拭きした。まったく兄は、すぐにこちらをからかってくるから反応に困る。  ――まあいいや……。とにかく、このまま平和な生活が続くといいな。  鍛錬したり、買い物したり、山登りしたり狩りをしたり……そういう当たり前の日常が送りたい。刺激的なことはなくていいから、兄弟二人で仲良くのびのび生活していきたい。  離れ離れになるようなことは、さすがにもう御免だ……。 「こんちはー! お菓子できてるー?」  ベランダから元気な声が聞こえ、アクセルはそちらに首を捻った。  案の定そこにはミューがいて、大きなペロペロキャンディー片手に佇んでいる。 「ミューじゃないか。今日はどうしたんだ?」 「どうって、お菓子食べに来たんだよー。施設についていったお礼に作ってくれるって言ったじゃーん」 「あ、そうだった……。ごめん、まだ作ってなくて」 「えー、そうなのー? てか、今日は何? 大掃除の日なの?」 「いや、これは兄上が急に始めてしまってな……。成り行きで俺も手伝ってるんだ」 「ふーん? まあいいや。……ところで、来月から新しいランクマッチが開催されるって知ってたー?」 「ランクマッチ? 何だそれ?」

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