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第1161話

 初めて聞いた単語に、アクセルは首をかしげた。  当のミューはペロペロキャンディーを咥えながら、しれっと言う。 「詳しいことは知らないー。でも、公式の死合いとはまた別の死合いになるみたいだよー。ランクマッチ専用ルールもあるみたいで、いつものランキングとも関係ないんだってー」 「……え? それってつまり……」 「よくわかんないけど、一位と最下位の戦士(エインヘリヤル)がマッチングすることもあり得るかもーってさ」 「……!」  それを聞いて、ハッと目を見開いた。  普段のランクとは関係なく、独自のルールでマッチングが行われる。ということは、自分くらいのランクであっても兄と戦うチャンスがあるということだ。わざわざランクを上げなくても、運がよければマッチングするということだ。  そう思ったら、俄然元気が出てきた。 「ありがとう、ミュー。そのランクマッチの詳しい話はどこでわかるんだ?」 「世界樹(ユグドラシル)の前に、おっきい看板が出てるよー。僕は途中で読むの面倒になっちゃったけど、ジークなんかは隅から隅までちゃんと読んでたなー。真面目だね」  なるほど、そんなに大きな看板なのか。それは気合いを入れて読みにいかないといけない。どうせ兄は面倒臭がって最後まで読まないだろうから、自分がきちんとルールを把握しておかなくては。 「わかった。じゃあ今から世界樹(ユグドラシル)に行ってくるよ。それからミューのお菓子を作るからな」 「どうせ作るなら、美味しいケーキがいいなー。ユーベルからもらったハチミツ使って、お茶に合うケーキ作ってー。その間に僕、ユーベルから紅茶もらってくるー」  そう言って、ミューはさっさと庭を通って立ち去ってしまった。立ち去り際、ピピにペロペロキャンディーを差し出していたが、案の定そっぽを向かれていた。  ――何でかわからないけど、ミューのキャンディーにだけは見向きもしないんだよな、ピピは……。

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