1164 / 2296
第1164話
「おかえり。ルールの把握はできたかい?」
「おおまかにはな。細かいところはまた後日メモしに行くつもりだ」
「そんなに細かかったの? 面倒だなぁ……お前、ちゃんと理解してきてね。そして私に全部教えて」
「う、うん……そうだな」
完全に人任せの兄である。わかってはいたけど、困ったものだ。
アクセルは苦笑いしつつ、席について昼食をとった。
野菜も食べたいとリクエストしたせいか、肉々しいサンドイッチと一緒にサラダも出てきた。サンドイッチに挟み込むという発想はなかったみたいだが、これはこれで美味しい。
食事を終えた後は、ミューの要望に応えてハチミツのケーキを作った。クリームを作る時、砂糖の代わりにハチミツを使い、スポンジ生地にもハチミツを練り込んだ。おかげでだいぶ甘いケーキが出来上がったが、紅茶のお供にはちょうどよさそうだ。
兄が嬉しそうにケーキを味見してくる。
「おお、美味しいケーキができたね。疲れた身体にもいいかも」
「それならよかった。ちょっと甘すぎるかなとも思ってたんだ」
「私はこれくらいの方が好きだな。ミューも喜ぶと思うよ」
「ああ。じゃあ早速ミューを呼んで来……」
そう言いかけた時、ベランダからミューの声が聞こえてきた。
「こんちはー! ケーキできてるー?」
「おいおい、ここフレインの家じゃねぇか。美味しいケーキってそういう意味だったのか」
「薄々気づいていましたけど、案の定でしたね。紅茶を持参しておいて正解でした」
ジークとユーベルもいるようだ。ミューに誘われたのかもしれないが、美味しいものがある時に限ってよく現れる人たちである。
アクセルはできたてのケーキをリビングに運びつつ、言った。
「いらっしゃい。ちょうど完成したところなんだ。今切り分けるから好きなところに座っててくれ」
「やったー! ケーキ、ケーキ♪」
ミューがウキウキとケーキの前に座り込む。
ユーベルなどはわざわざ持参した紅茶の葉をこちらに手渡し、「これで紅茶を淹れてください」と要望してきた。
ともだちにシェアしよう!

