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第1165話

「きみ達、何だかんだでよくうちに来るねぇ。うちは定食屋でもカフェでもないんだけど」  と、兄が苦言を呈する。  するとジークが軽く鼻を鳴らした。 「これくらい我慢しろよ。お前さん、今までさんざん周りに迷惑かけてきただろ。メシを奢るくらいじゃ足りないくらいだ」 「奢るも何も、これは弟が作ったケーキなんだけど」 「弟くんも同じようなもんだよ。無自覚かもしれんが、結構俺たちをこき使ってるんだぜ? なあ?」 「んん?」  話を振られたミューが、ケーキを頬張ったまま首を捻る。彼はケーキを切り分けられる前に、ホールのままフォークで崩して食べていた。 「あー、施設に潜り込んだことなら、僕はあまり気にしてないよー。結構楽しかったし、こうしてケーキも食べられるし……もぐもぐ」 「あなたは気にしなくても、わたくしは少々気になりますね。図々しいお願いをされることも少なくありませんし」 「す、すみません……。なるべく迷惑をかけないようにしてるつもりなんですが」  ……身に覚えがありすぎて、なんだかバツが悪い。全ては自分の無知と未熟さのせいだろう。もっとしっかりしなくては。 「それはそうと、お前さんは来月からのランクマッチのルール、きちんと把握してるのか?」  と、ジークが尋ねてくる。 「大まかなルールはさっき確認してきました」  アクセルは頷きながらケーキを切り分けた。ミューが食べかけている場所を避けて切ったら、一人分がだいぶ小さくなってしまった。 「月ごとにルールが変わるとか、なかなか面白い試みですよね。死合いとはまた違った戦いができそうで、ちょっと楽しみです」 「……そうか。素直というか、なんというか」 「え? どういう意味ですか?」 「お前さんも結構呑気だな。あのランクマッチが始まったら、間違いなく妨害や隠蔽工作が横行するぜ」 「? 何故です?」  意味がわからなくて聞き返したら、ジークはこんなことを言い出した。

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