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第1166話

「つまり、間違ったルールを押しつけてわざと相手を反則負けに追い込む連中が続出するだろうってことだ。その方が直接戦うより遥かに簡単だからな」 「ええ……? そんなことして何になるんですか? ランクマッチに勝ったところでランキングが上がるわけじゃないん……」  そう言いかけて、あることを思い出した。  ――そういえば、「ルールを破ったらペナルティーでランクが下がる」って書いてあったような……。  ランクマッチは、勝っても負けてもランクには直接影響しない。  だから勝敗関係なくのびのびバトルを楽しめるものだと思っていた。公式死合いだけじゃ戦う機会が少なすぎるから、その救済措置として娯楽性の強いバトルを企画したのかと思っていた。  そのランクマッチに、そんなきな臭い裏側があったとは……。 「でも……でも、妨害なんてするヤツいるんですかね? 人の足を引っ張ったって、自分が強くなるわけじゃないんですし」 「世の中、お前みたいに真面目な人ばかりじゃないんだよ」  と、兄が代わりに答える。 「ヴァルハラには三〇〇〇人近い戦士がいるんだ。それだけいれば、セコいこと考えるヤツも出てくる。今の上位ランカーがいなくなれば、自分が上に行ける可能性も出てくるわけだからね」 「そういうことだ。だから、上位ランカーほど気をつけないといけないんだよ。フレインも、ルールの確認は自分でやった方がいいと思うぜ。弟くんに丸投げするんじゃなくてな」 「ああ、それは大丈夫。うちの弟が間違ったルールを教えるわけないから。ね?」 「あ、ああ……それは、まあ……」  アクセルは曖昧に頷いた。……間違ったルールを教えないように気を付けなければ。 「そんな小難しい話より、もっとケーキ食べたいなー。ハチミツのケーキ美味しいー」  空気をぶち壊すように、ミューがフォークを弄ぶ。  ミューには多めに半ホール分切ったはずだが、皿はとっくに空になっていたようだ。よくそんなに食べられるな……と呆れてしまう。

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