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第1168話

「あー……そういえば、オーディン様に面会する時も頭堅いヴァルキリーに止められたことあるよ。名前は忘れちゃったけど」 「兄上も経験があるのか。というか、オーディン様に面会って何しに行ったんだ?」 「そりゃあ、お前の復活をお願いするためさ」 「えっ……?」  顔を上げて兄を見たら、兄はにこりと微笑んで続けた。 「そんなに驚くことでもないでしょ。私としては当然のことをしただけだし」 「いや、驚いたというか……復活時にどういう課程を経たのか知らなかったもので」 「あ、そうだっけ? でもあの時はミューがヴァルキリーの相手をしたから、私は直接戦ってないんだよね」 「……え。ヴァルキリーって手を出してくることもあるのか?」 「あるよ。思い通りにならなければ問答無用で首をはねてくることもあるよ。まあ、彼女たちの実力は中堅ランカーくらいだから、そうそう負けることもないんだけど」 「は、はあ……そうなのか……」  兄のような上位ランカーなら負けないだろうが、自分のような中堅ランカーだと微妙だなと思った。  女性に剣を向けるのも気が乗らないし、ヴァルキリーとのトラブルはなるべく起こさない方がよさそうだ。 「で、来月からのルールはだいたい把握できた?」  と、兄が散らばったメモを一枚手に取る。  アクセルは気を取り直し、メモを順番通りに並び替えながら、説明した。 「初めてのランクマは、『飛び道具のみ使用可能』になるそうだ」 「飛び道具のみ? 弓とか石とか、そういうのしか使えないの?」 「基本はそうらしい。ただ、投擲すれば何でもOKみたいなところはあるみたいだ。例えばナイフを投げて使うとか」 「ふーん? じゃ、私の太刀を投げて使うことも可能なのかな」  兄が腰の太刀をひょいと持ち上げる。  ……大事な愛刀を、そんな気軽に投げようとしないで欲しいのだが。

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