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第1169話

「……太刀はやめた方がよさそうだぞ。当たり判定もあるみたいだから、なるべく面の広い武器を使った方が有利になる。平べったい巨石なんかを投げれば、一気に形勢逆転できるだろうな」 「ふーん……? ちなみに、神器は禁止されてないの?」 「ああ。『禁止』とは書かれてないな」 「そっかー……。となると、ミューの一人勝ちで終わりそうだなぁ」 「え? どういうことだ?」 「だってミューの神器ってミョルニルのレプリカじゃない。あんな大きなハンマー投げられたら、全員まとめてぺちゃんこだよ」 「……げ。そうだったっけ」  ミョルニルとは、オーディンの息子・トールが所持している雷槌である。  オーディンの神槍グングニール同様、投げればほぼ百発百中。ラグナロクの最中も、巨人たちの頭を潰しまくった凶悪な武器だ。その凶悪さはレプリカでも変わらない。  ましてや使用するのがランキング一位の戦士(エインヘリヤル)となれば、投擲するだけで勝利確定するのは間違いなかった。チーム戦であっても複数まとめて潰せるので、何人束になっても勝負にならないと思う。  ――せっかくのランクマなのに、いきなりゲームバランス崩壊してるじゃないか……。  これでは戦う意味がない。せめて神器は使用禁止にして欲しい。  そう頭を抱えていると、兄が小さく噴き出した。 「まあ大丈夫だよ。ミューはそんなつまらないことはしない。投げただけで勝負が決まるなんて、遊びにもならないし」 「そ、そうだよな……。ミューなら、バトルを台無しにはしないよな……」  気を取り直し、アクセルはココアを一口啜った。  飲み慣れているココアかと思ったら、予想以上に濃厚な甘い味が舌に広がった。これは美味しい。 「……あれ? これいつものココアじゃないな? どうしたんだ?」 「ふふ、実はこれ、ユーベルからお裾分けしてもらったチョコレートドリンクなんだ。ユーベル、最近美味しいチョコレート探しにハマってるんだってさ」

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