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第1170話

「そうなのか……。ユーベル様もいろいろと趣味が広いな」 「貴族の道楽だよ。死合いがあまり入らないから、毎日ヒマでヒマでしょうがないみたいで」 「だったら宴で、舞を披露すればいいのでは?」 「やだな、そんな毎晩舞ってたら死体の復活が追いつかなくなるじゃないか」  ……それもそうか。  ありがたくチョコレートドリンクをいただくことにして、アクセルはメモの続きに目を通した。  ――飛び道具のみってことは、俺も弓矢の練習をしないといけないのかな。  アクセルの武器は二刀小太刀、神器はミストルティンというヤドリギである。ヤドリギに関しては投げつけることも可能だが、自動で戻ってくるわけではないので戦闘中に回収することが前提となる。が、実際にそんなことをしている暇はないので、実質投げられるチャンスは一度きりだ。  そういったことを考えると、回収不要な使い捨ての矢を使う方が望ましいと思われる。  しかし……。 「……ただでさえ未熟なのに、今からじゃ付け焼刃にしかならない気がする……」 「そういやお前、弓矢はあまり得意じゃなかったんだっけ?」 「自信はないな……。死合いではほぼ使わないから、ヴァルハラに来てからも滅多に練習してこなかった」 「ありゃ、それはよろしくないね。というか、それなら普段の狩りはどうしてたの?」 「それは……罠を仕掛けて、獣が引っ掛かったところを小太刀でズバッと……」 「……要するに、弓矢を使わない方法で何とかしてたってわけね」 「うう……すみません……」  更に言い訳させていただくなら、小太刀の扱いですら未熟なのに弓矢の練習なんてしている場合じゃなかった……というのもある。いや、どの道未熟なのは変わりないのだが。 「まあ、今から弓矢なんて練習したところで、それが得意な戦士(エインヘリヤル)には敵わない。お前はヤドリギを投げつけるのに集中してみたらどうだい?」 「やっぱりそれしかないのかな……。個人的にはちょっと複雑なんだが」

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