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第1171話
投げるしか能がないみたいで情けないし、子供がヤケクソで石を投げているみたいに見えやしないか。戦士 としてはみっともない限りだ。
――まあ、そんな贅沢言ってる場合じゃないか……。
とりあえず、最低限の弓の訓練はしておこう。下手な弓でも数を打てば当たるものだし。
アクセルはチョコレートドリンクを飲み干し、ガタッと席を立った。
「さて、そろそろ鍛錬でもしてくるか。終わったらまた続きをメモしてくるよ」
「じゃあ私も鍛錬してこようかな。たまには真面目にやらないとお前に抜かされてしまいそうだ」
「そ、そうだな……。じゃあ、夕飯までには帰るということで」
そう言って、二人で揃って家を出た。兄は山に鍛錬に行き、アクセルはスタジアム近くの鍛錬場に向かった。
鍛錬場には様々な武器やトレーニング器材が揃っているので、何をすればいいかわからなくなった時はとりあえずここに来てみる。他の人の様子を観察しつつ、自分のメニューを決めるのだ。
――今日は弓の鍛錬をしている人が多いな……。
来月からランクマが始まるのだから、当然と言えば当然か。他にもボウガン、ダーツの練習をしている人がいる。
じゃあ俺も弓の練習を……とレンタル用の弓と矢を選び、的を射ている人たちの間に立った。
「……ん?」
その中に、見覚えのある人物を発見した。平均よりやや小柄で、黒いおかっぱ頭をしている。
「あれ……? きみ、コニーか?」
「あら、あなたはアクセルさん? こんなところで奇遇ですね」
コニーが手を止めてこちらに顔を向けた。彼は白い小袖をタスキで腕まくりし、紺色の袴を着ていた。弓矢と合わさると随分サマになっている。
「なんというか……すごくかっこいいな。それだけで凄腕のアーチャーに見える」
「ありがとうございます。単純な弓道だったらランゴバルト様にも引けを取りませんよ」
「そ、そうなのか……。ますますすごいな」
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