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第1175話
どうしたもんかな……と的を眺めながらその場に立っていると、
「おい、ボーッとしてるならどけよ。練習の邪魔だ」
「てか、そんな下手くそなら別のところ行ってくんない? 間違って矢が当たっちゃったら嫌だし」
「下手くそすぎて気が散って集中できねぇよ」
隣で練習していた三人組が、口々にいちゃもんをつけてきた。見るからに柄の悪そうな男たちだった。やたらとガタイがよかったので、ちまちま弓を引くより大斧をぶんぶん振り回した方が似合いそうである。
――なんか、あまり関わりたくない連中だな……。
アクセルは素直に身を引き、借りていた弓矢を抱えてその場を退散した。逃げるようで少しシャクだったが、変なトラブルを引き起こすよりマシだと思った。ああいうのは、下手に絡むと逆上して襲い掛かって来る可能性がある。
――まあ、鍛錬場での練習はもっと上手くなってからでもいいしな……。
それまでは自宅でコツコツ弓の練習をしよう。ぶっちゃけ鍛錬場の的は、アクセルには遠すぎて狙いづらい。手元が狂って誰かに怪我をさせてしまったら申し訳ないし。
予定よりだいぶ早いが、アクセルは夕食の買い物をしてから家に戻った。今日は兄に料理をしてもらうつもりだったが、コニーの話を聞いた手前、兄に丸投げするのもどうかと思ったのだ。
「さて、今日はどうするか……」
何も考えずに必要そうな食材を買ってきてしまったが、メニューはどうしよう。昼はハムカツのサンドイッチだったから、今度は野菜をたくさん食べられるメニューにしたい。
――適当に鍋でいいか。
鍋なら野菜もたくさん採れるし……と思い、アクセルは買ってきた野菜や肉をざくざく切り刻んだ。〆はいつもうどんかラーメンにしているが、時間があったので餃子を作ってみた。最近、鍋の〆を水餃子にするのがちょっと流行っているらしい。
兄の分も見越して多めに餃子を作ったところで、時間を確認した。まだ四時前だった。さすがに兄もまだ帰ってきていない。ちょっと準備が早すぎたようだ。
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