1185 / 2296
第1185話*
「えっ、兄上!? どこ行くんだ!? 待ってくれ!」
ジタバタと脚をばたつかせたが、兄はしれっと隣のベッドに潜ってしまった。そして何事もなかったように掛け布団をかけ、こちらに背中を向けてくる。
――う、嘘だろ……!?
さすがにぞっとして血の気が引いた。
まさか本当に放置されるとは思わなかった。自分では動けないのにこんな状態で放っておかれたら、一晩我慢できる気がしない。頭がおかしくなってしまいそうだ。
アクセルは縛られた腕を揺らし、首を捻って兄に訴えかけた。
「あ、兄上、助けてくれ……こんなの嫌だ……!」
「…………」
「お願いだ……許して兄上……無視しないで……!」
「…………」
「兄上ぇ……」
反応がないことに耐えられず、子供のようにぼろぼろ泣きじゃくる。
正直、今までで一番キツい仕打ちかもしれない。兄にめちゃくちゃに犯されるのは耐えられるけど、無視だけは我慢できない。どうしていいかわからなくなる。
泣いても何の反応もないところも、また辛かった。こちらが大泣きすれば、大抵は兄の方が折れて「ごめんね、やりすぎた」と謝ってくれるのに、今回はそれすらも無視されてしまう。
「あに、うえぇ……」
ひっく、としゃくり上げる。
強情な自分に怒ってしまったのだろうか。素直じゃない弟はいらないということなのか。
兄上に見捨てられたらどうしよう……。そんなことになったら生きていけない……。
「ごめん、なさい……兄上……許して、ください……」
途切れ途切れに、正直な気持ちを吐露する。自分の小さなプライドより、兄と一緒にいることの方がずっとずっと大事だ。
「い、れて……兄上を、ください……奥まで、挿れて、ほし……」
「うん、やっと言えたね」
ようやく兄が自分のベッドから抜け出し、こちらに戻ってきてくれた。
褒めるように優しく頬を撫でられた瞬間、今度は安心して泣いてしまった。
ともだちにシェアしよう!

