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第1185話*

「えっ、兄上!? どこ行くんだ!? 待ってくれ!」  ジタバタと脚をばたつかせたが、兄はしれっと隣のベッドに潜ってしまった。そして何事もなかったように掛け布団をかけ、こちらに背中を向けてくる。  ――う、嘘だろ……!?  さすがにぞっとして血の気が引いた。  まさか本当に放置されるとは思わなかった。自分では動けないのにこんな状態で放っておかれたら、一晩我慢できる気がしない。頭がおかしくなってしまいそうだ。  アクセルは縛られた腕を揺らし、首を捻って兄に訴えかけた。 「あ、兄上、助けてくれ……こんなの嫌だ……!」 「…………」 「お願いだ……許して兄上……無視しないで……!」 「…………」 「兄上ぇ……」  反応がないことに耐えられず、子供のようにぼろぼろ泣きじゃくる。  正直、今までで一番キツい仕打ちかもしれない。兄にめちゃくちゃに犯されるのは耐えられるけど、無視だけは我慢できない。どうしていいかわからなくなる。  泣いても何の反応もないところも、また辛かった。こちらが大泣きすれば、大抵は兄の方が折れて「ごめんね、やりすぎた」と謝ってくれるのに、今回はそれすらも無視されてしまう。 「あに、うえぇ……」  ひっく、としゃくり上げる。  強情な自分に怒ってしまったのだろうか。素直じゃない弟はいらないということなのか。  兄上に見捨てられたらどうしよう……。そんなことになったら生きていけない……。 「ごめん、なさい……兄上……許して、ください……」  途切れ途切れに、正直な気持ちを吐露する。自分の小さなプライドより、兄と一緒にいることの方がずっとずっと大事だ。 「い、れて……兄上を、ください……奥まで、挿れて、ほし……」 「うん、やっと言えたね」  ようやく兄が自分のベッドから抜け出し、こちらに戻ってきてくれた。  褒めるように優しく頬を撫でられた瞬間、今度は安心して泣いてしまった。

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