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第1193話

 ――兄上……。  思わず見惚れてしまう。言うまでもなく、かっこいい。  太刀を振るっている姿も素敵だが、弓を引いている姿はレア度も相まって更にかっこよく見える。遠くの的にもほぼ真ん中に命中しているし、腕も上位ランカーに恥じないものをお持ちのようだ。  さすが兄上。自分も早くあんな風になりたい……。 「ありゃ、起きてたの?」  こちらに気づいた兄が、手を止めてにこりと笑いかけてきた。 「おはよう。もっと寝ててもよかったのに」 「いや、もう十分寝たから。というか、ここまで寝坊してたら起こしてくれよ……」 「でも昨日、結構やらかしちゃったじゃない? 最後はお前、気絶しちゃったし。だから、いっぱい休ませてあげた方がいいかなと思って」  露骨にそんなことを言われ、かあっと頬が熱くなった。  そう思うなら少しは手加減してくれればいいものを、夜の兄は毎回容赦なくて時々ついて行けなくなる。  まあ、自分も何だかんだで快感を享受していたのだから文句は言えないが……。 「じゃあ、せっかくだから一緒にやろうか。的はいっぱい作ったから、好きなだけ練習できるよ」  と、兄が積み上げられた的の山を指し示す。  丸太を輪切りにしただけのシンプルなものだが、自分は下手くそなのでたくさん用意してくれるのはありがたい。  アクセルは早速兄の的の横に自分の的を並べ、軽く準備体操をした。そして兄と同じ位置に立ち、力いっぱい弓を引いた。 「……うわっ!」  力の入れ方がおかしかったのか、矢がすっぽ抜けてあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。的に当たるどころか家の屋根に突き刺さってしまって、自分でも呆気にとられてしまった。  なんだこれは。さすがに下手くそすぎだろう。 「……ええと。もう少し力抜いてやってみたら? 刀を振るう時もそうだけど、力んでるとあまりよくないよ」 「は、はい……すみません……」 「もう一度真面目にやってごらん。リラックスして、スッ……と弓を引くんだよ」  ……いや、今のも真面目にやったつもりなのだが。

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