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第1194話

 ――くよくよしても仕方ない。アドバイス通りやってみよう。  気を取り直して、もう一度弓を構えてみた。なるべく余計な力を入れず、キリキリと弓を引き、集中して的を狙う。  よし、と思って矢を放ったが、今度は的に届く前に地面にグサッと刺さってしまった。 「……あ」  思わず唖然とした声が漏れる。チラッと兄の顔色を窺ったら、兄も困ったような表情で矢を見つめていた。 「ええと……ちょっと的が遠すぎたのかな。お前はもう少し近くに置いた方がいいかもね」 「…………」 「あるいは、その弓が合ってないのかも。武器の相性もあるし、もっと別のにしてきたら?」 「……いいよ、無理にフォローしなくて」  自虐気味にそう呟く。  ――ああもう……俺、ダメすぎる……。  自分の下手くそっぷりに膝から崩れ落ちそうだ。初めて弓を触った人よりもひどいのではなかろうか。  こんなんじゃランクマッチで戦うどころの話じゃない。下手したら味方を思いっきり攻撃してしまう。  アクセルはのろのろと弓を置き、代わりにヤドリギを取り出した。 「いろいろアドバイスありがとう。でも、俺に弓は向いてないみたいだ。次のランクマッチにはヤドリギで出場するよ」 「そうかい? まだ練習の時間はあるけど……」 「一朝一夕に上手くなるものでもないだろ。俺が兄上くらいのレベルになるには、とてもじゃないが間に合わないよ。悔しいが、今回は諦めてヤドリギに切り替える」 「…………」 「たくさん的を作ってくれたのに、すまないな……」  アクセルは八つ当たりのように、的に向かってヤドリギを投げた。  飛んでいく中でヤドリギは鋭い剣に変形し、グサッと的に当たってくれた。中心からさほど外れていなかったので、狙いは悪くないようだ。 「…………」  その様子を、兄は横から観察してきた。特に口は挟んでこなかったので、投球フォームに問題はないのかなと思った。

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