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第1195話

 しばらくして昼食の時間になったので、兄は一足早く家に戻った。アクセルは十時くらいに朝食を食べたばかりなので、あまり腹が減っていない。昼食抜きでもいいくらいだ。 「アクセル。私、お昼食べたらちょっと出掛けてくるよ」 「そうなのか。どこに行くんだ?」 「武器屋かな。あの職人さんに頼みたいことがあって。夕飯までには戻るよ」 「わかった。いってらっしゃい」  兄を送り出し、アクセルは再びヤドリギを投げる練習をした。  ――しかしこのヤドリギ、ちょっと狙いがズレても勝手に軌道修正して当たってくれるんだな……。  わざと的の外に向かって投げても、目的の場所はこっちだとヤドリギ自身が認識しているらしく、毎回ほぼど真ん中に命中してくれる。  さすがに反対方向に投げた時はそのまま飛んでいったが、数メートルのズレくらいなら当たり前に修正してくれるのに舌を巻いた。さすがは神器というべきか。  ――というか、こんなの使っていたら狙いを定める腕そのものが腐りそうだ……。  ヤドリギの軌道修正に甘えて、本来の腕が落ちるのはよろしくない。  たまにはヤドリギではなく、普通のボールで的当てをした方がいい気がする。 「よいしょ……っと」  裏の武器庫に置いてあった大量のボールを、バケツに入れて持ってきてみた。  それでせっせと的当て練習を行い、ボールを使い切ったら回収するという地味な作業を繰り返した。  ピピも回収を手伝ってくれたが、途中で面倒くさくなったのか、小屋に入ってぐーすか昼寝をし始めた。  ――ま、まあ、これ以上同じこと繰り返しててもスキルは上昇しなさそうだしな……。  休憩がてらアクセルは家に戻り、ハチミツ入りレモン水で水分補給を行った。  そしてキッチンに立ったついでに夕食の仕込みをしてしまおうと、イノシシ肉と野菜を切ってシチューを作った。本格的に一からシチューを作るのは、結構久しぶりな気がする。 「ただいまー」  そうこうしているうちに兄が帰ってきた。見れば、もう夕方になっていた。

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